ハニートラップ
phase:47 一歩
来るはずだった日を1日空けて、高峰くんが登校してきた。
腫れも引いて痣もほとんど薄くなっていたけど、左腕を包帯で固定されてそこかしこに痣を残す“高峰久哉”の姿はやはり衝撃的。
すでに出回っていた尾ヒレ付きの警察沙汰の噂も相まって、高峰くんはまた一匹狼になった。
教室中の話題が“高峰久哉”で持ちきりの中、その隅っこで千歳ちゃんが声を顰めた。
「すごい大怪我だったね、高峰くん。
……大丈夫?」
「検査は異常なしだったから、一応……?
不便そうにはしてるけど。」
「……珠桜ちゃんは?」
「私?私は……」
“怪我してないし”と言いかけて止める。
聞きたいのは、多分そういうことじゃない。
「大丈夫だよ。自分でちゃんと決めたから。」
答えを聞いても、千歳ちゃんは浮かない顔。
それでも、笑ってはくれた。
「……そっか。それならいいんだ。」
温めの優しさに救われる。
そうしてるうちにチャイムが鳴って、いつも通りの授業風景になっていった。