ハニートラップ
――……
――――
「あの“高峰久哉”が」
――と、ざわつく応援席の中心で、私は1人取り残されたように呆然としている。
みんなが見ている前で、平然と千歳ちゃんを背負っていた高峰くん。
「ひゃあ〜、カッコ良すぎでしょ!高峰久哉♡
ねっ珠桜!」
蕩けた顔したミナが、はしゃいでこっちを見る。
「あー……、ね。」
笑顔で頷くけど、意識はここにない。
背中、手、肩――
見てしまった“密着”だけが、強烈に印象に残って、いつまでも頭の中から消えない。
ドクン、ドクンと胸から全身に嫌な感情が巡っていく。
頭では特別じゃないってわかってるのに、
心が勝手に叫び出す。
――触らないで
と、思ってしまった。