ハニートラップ
――放課後。
私の教室に珍しい人が来た。
千歳ちゃんだ。
「珍しいね、どうしたの?」
実は彼女を見かけると、罪悪感でちょっと凹む。
でもそうは言えないので、ドア口で所在なさげにしている側に駆け寄る。
千歳ちゃんは笑みを浮かべながらも、意味深に私から視線を逸らして、すぐ戻した。
「えっと……今日は、俊平くんの家に行くから……
珠桜ちゃんも一緒に帰らないかな、と思って。」
「え、いいの?お邪魔じゃない?」
「……そんなことないよ!だから、行こ。」
これまた珍しくちょっと強引な千歳ちゃんに連れられて、私は2組の教室に行った。
「えー、珠桜もいんのかよ。邪魔ー。」
迎えに行くと、俊平は態とらしくブー垂れた顔をする。
「いいじゃない、たまには。ねっ。」
それを千歳ちゃんが優しく宥める。
千歳ちゃんは笑いながら、警戒するように教室の隅に神経を張り巡らせていた。
……本当にいていいのだろうか、私。
肩身の狭さを笑って誤魔化す。
その時、あえて気にしないようにしていた場所から、「えっ」と潜めきれていない高い声が聞こえた。