ハニートラップ

――――
――……

珠桜を抱き締める手を強めて、衝動を押し込める。

――珠桜が“嫉妬”して、俺に縋り付いている。

急激に近づいて、つついて、優しくして、突き放して。
俺が珠桜をそうさせた。


「高峰くん……っ。」

いつか、別の男の名前を呼んだ珠桜の唇が、俺の名前を呼ぶ。

ぞくぞくと迫り上がる扇情に、
仕掛け続けた罠の正しさを実感した。

「うん。……もっと呼んで、珠桜。」

濡れた唇を、そっと指でなぞる。

唇を重ねながら、嬉しいのに酔いきれず、頭の片隅でずっと考え続けている。



――まだ、まだだ。
もっと焦らして、揺さぶって。



珠桜が、もう2度と離れていかないように。

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