ハニートラップ
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ふわふわとした足取りで歩く廊下は、徐々に生徒が増えていく。
頭の中はさっきまでの高峰くんとの時間でいっぱい。
思い出すと湯気が出るほど照れ臭くなって、口を覆って目を伏せた。
『行かないで、高峰くん……!』
『――いいよ?』
高峰くんはあの日、私を“選んで”くれた。
もしかしたら、ただの気まぐれかもしれないけれど――
……いや、高峰くんの気持ちを考えるのはやめよう。
誰よりも側にいたいって思ったのは、
私なんだもん。
教室に戻ると、ミナがむくれた顔をしてこっちを見る。
ここ最近ずっとそうだ。
理由は明白で、私が“高峰久哉”と実はずっと繋がっていたことを知られたから。
マキもミナの側に立った。
『高峰久哉と、変なことになってないよね?珠桜。』
『何それ。別に何もないよー?』
私が嘘を吐いたから。
気まずさに2人から視線を逸らして、一言も交わさず席へ戻る。
だんまりを決め込んだ背中に、2人の視線を感じながらも何もしない。
謝ってしまえば多分、許してもらえる気がする。
それをしないのは、高峰くんとの関係に後ろめたさがあるからだ。