ハニートラップ

***
ふわふわとした足取りで歩く廊下は、徐々に生徒が増えていく。

頭の中はさっきまでの高峰くんとの時間でいっぱい。

思い出すと湯気が出るほど照れ臭くなって、口を覆って目を伏せた。


『行かないで、高峰くん……!』
『――いいよ?』

高峰くんはあの日、私を“選んで”くれた。


もしかしたら、ただの気まぐれかもしれないけれど――


……いや、高峰くんの気持ちを考えるのはやめよう。


誰よりも側にいたいって思ったのは、
私なんだもん。


教室に戻ると、ミナがむくれた顔をしてこっちを見る。
ここ最近ずっとそうだ。

理由は明白で、私が“高峰久哉”と実はずっと繋がっていたことを知られたから。


マキもミナの側に立った。

『高峰久哉と、変なことになってないよね?珠桜。』

『何それ。別に何もないよー?』

私が嘘を吐いたから。


気まずさに2人から視線を逸らして、一言も交わさず席へ戻る。
だんまりを決め込んだ背中に、2人の視線を感じながらも何もしない。


謝ってしまえば多分、許してもらえる気がする。

それをしないのは、高峰くんとの関係に後ろめたさがあるからだ。

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