ハニートラップ
少しの沈黙。
それからハッとして、高峰くんはぱっと顔を逸らした。
「……似てないだろ。
センスないな、呼水さんは。」
眉を顰めて口籠る。
ちゃんと同い年の男の子みたいに見える高峰くん。
「えー、似てるよ。特にこのダルそうな目!」
気まずそうな顔が可愛くて、もっと見たくて煽ってみる。
「似てないって。」
ウサギを持つ手を掴んで引き下げられ、屈んだ高峰くんの顔が近づいてきた。
反射で咄嗟に目を閉じると、高峰くんが息を呑む。
吸い寄せられるように唇に向かってきたと思ったら、一瞬止まって躊躇う。
自分でもその意味がわからなかったのか、訝しげに眉を寄せた。
額に軽くキスされるまでの、ほんの一瞬の間のことだった。
――目を開けた時には、高峰くんはもう余裕顔。
「いい加減にしないと、こうなるよ?」
胸がバクバクと騒ぎ出す。
妖艶で意地悪な笑顔に、もう照れはない。
代わりに私が撃沈。顔がカァッと熱くなった。
「高峰くん!ここお店の中!」
「ね。誰かに見られちゃったかもね?」
飄々としてる高峰くんに、私は1人たじろぐだけ。
恋人“みたい”な甘い時間。
その底で、何かが静かに沈んでいく音がした。