エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 夫婦で話し合った末、引っ越しは卒園式が終わるまで待つことにした。

「すみません……。すぐに出て行く約束だったのに……」
「いいのよ。気にしないで。遠慮せずに、今のうちは楽をしてね?」

 店長さんのご厚意に甘え続けるのも忍びないとわかっていた。
 しかし、短いスパンで居住区が変わると子ども達が混乱する。
 その可能性も考慮すれば、これが最善だった。

 ――卒園式まであと1か月。
 何事もなく、過ごせるといいんだけど……。

 そんな私の不安は、嫌な方向で的中する。

「大門寺さん。いつも、すみません……」
「いつまで、名字で呼ぶつもりだ?」
「そ、そうでした……」

 これからは純司さんと、呼ぶんだった。
 それを思い出して気恥ずかしい気持ちでいっぱいになった私達夫婦は、保育園に繋がる一本道を並んで歩く。
 その直後、事件が起きるなど気づかずに……。

「あれって……」
「リムジンだな」
「誰かのお迎えでしょうか……?」

 裕福なご家庭の子は、保育園ではなくシッターに預けるか、私立の幼稚園に入れるのが一般的だ。
 敷地を隔てる門の前に、見慣れない黒塗りの車が止まっているなんて、一体何事だろうか。
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