エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 そう不審に思いながらもその横を通り過ぎ、昇降口を目指して歩みを進める。

 ――すると、児童の大泣きが風に乗って聞こえてきた。

「うわぁあん!」
「つかさ! しっかりして!」
「やだぁあ! 怖いー!」
「りょうかが、一緒にいるから!」

 涼花が兄の名前を呼ぶ声を聞き、私達は顔を見合わせる。
 双子が喧嘩をしているのはいつものことだが、それにしては様子がおかしかったからだ。

「早くそいつらを、私に渡せ!」
「止めてください!」
「私を、誰だと思っている!」
「保護者以外のお迎えはご遠慮して頂いております!」

 やがて、言い争う男性と保育士の声まで聞こえてきた。
 これはただ事ではないと悟り、急いでその声がした方向に駆けつける。

「シールドエージェンシーの、大門寺――」
「司!」
「涼花……っ」

 大泣きしている兄を抱きしめていた涼花は、両親の到着を確認してパッと表情を明るくさせる。

「あ、パパ!」

 司は妹の声を聞き、涙目で大門寺さんの姿を探した。

「パパ……!」

 ゴシゴシと涙を拭うと、涼花と手を繋いでこちらに向かってやってくる。
 夫は軽々と双子を抱き上げ、保育士と揉めている年配の男性を睨みつけた。
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