エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「今日1日で全部をこなそうとしなくったって、いいんだ」
「パパ……」
「小学校に慣れてきたら、また来よう」
「これで、最後じゃないの……?」
「ああ。2人が気に入ったなら、何度だって遊びに来ればいいんだ」

 純司さんの優しく諭す声を聞いても、司の顔色は優れなかった。
 それは、金銭的な面から「また来ようね」と約束をしても2度目が実現した覚えがないと自覚しているためだ。

「でも……。お金……」
「もう、気にしなくていいんだ。これからは、僕がいるからな」
「パパ……!」

 息子は感極まった様子で、純司さんに飛びついた。
 感受性の強い司は必要以上に周りを気にしてしまい、不安でいっぱいになっていただけらしい。
 彼に抱きついてからは肩の力が抜けたようで、やがて食事を再開した。

「りょうかは……?」
「お花屋さんに行っている」
「ケーキを食べ終わったら、何がしたい?」
「ぼく、べんごしさんとけいびいん、もう1回ずつやる……」
「わかった」

 司はどうやら、先程体験した職業が気に入ったらしい。
 親としては「限られた時間の中でいろんな職業体験をしたほうがいいんじゃないの?」と口を挟みたい気持ちでいっぱいになるが、ぐっと堪えた。
 それは涼花が積極的に、自らの意思で行っているからだ。

 ――正反対の双子を、同じに育てる必要はないよね。

 私はそう納得すると、食べ終えたゴミを片づけて席を立った。
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