エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
 ――や、やっと終わった……!

 そうほっと一息つく暇もなく、店長さんが車で甥っ子さんの働く弁護士事務所まで送ってくれた。

「帰りは甥に頼んでおいたから! 頑張ってね!」
「え? あ、あの……っ。ま……!」

 1人にしないでと言い終える前に、彼女は「子どもと旦那が待っているから」と帰ってしまった。

 ――ど、どうしよう……。

 予約をしてもらった手前、ドタキャンなんてしたら相手に迷惑がかかってしまう。
 ここで弁護士さんに会わずに逃げ帰るなんて選択肢がないとわかっていても、一歩を踏み出すまでは勇気が必要だった。

 ――ここにいたら、迷惑だよね……。

 職場からここまでは、車で移動している。
 不審者が追いかけてくることはないだろうが、見つかると面倒だ。
 早く中に入らなきゃと、ようやく覚悟を決めて一歩足を踏み出した時だった。

「こんなところで、何をしているんだ」

 事務所の中から出てきたスーツ姿の男性に、声をかけられた。
 まず最初に飛び込んできたのは、こちらをじっと見下す訝しげな視線だ。
 その後、ワックスで固められた黒髪が目に入る。
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