エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「警視庁の、刑事さん……?」
園山(そのやま)だ。今日は、弟の件で話があってきた」
「弟さん……?」
「金はいくらでも払う。このまま被害届を提出せず、示談にしてくれ」

 私は園山さんが何を言っているのかさっぱり理解できなかった。
 しかし、“被害届”という単語を聞いてようやく悟る。
 この刑事さんは、私のあとを着けてくる不審者の兄なのだと――。

「所轄に圧力をかけていたのは、君か」
「そうだ。俺がどれほど苦労をして、警視まで上り詰めたと思っている!? こんなくだらんことで、身内から犯罪者を出すわけにはいかんのだ!」

 園山さんは、私が1年近くもあとを着けられたことを「くだらない」と一蹴した。
 それに強い怒りを感じた私は、黙っていられずに口を挟んでしまう。

「私はあなたの弟さんから毎日のようにピッタリと後ろを着いて来られて、すごく怖かった……! その気持ちを、くだらないなんて一言で片づけないでください!」
「なんだと!? 元はと言えば、貴様がその身体を使って、弟を誘惑したのがいけないんだろう!」
「そんなこと、してません! 私は駅から自宅までの道のりを、普通に歩いていただけです……!」

 柄にもなく勇気を出して声を荒らげてはみたものの、即座に心ない言葉をぶつけられてしまったせいか。
 目元には涙が滲み、呼吸が荒くなる。
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