エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「お、お付き合い……しているんですか……?」
「それはないと思うわ。純司は、葵ちゃんを毛嫌いしているから」
「で、でも……っ」

 彼が許嫁さんに対してなんと言っているかまではここからでは聞けないが、本当に嫌いならばまるで恋人のように顔を近づけられたら、もっと強い拒否の姿勢を取るのではないだろうか?

 ――私には、大門寺さんの気持ちがわからない。

 どうしてこんなにタイミングよく、許嫁さんと道端でいちゃついているの? 
 お仕事は?
 仲睦まじい様子を見せつけられたら、妊娠したなんて打ち明けられない。

 私が好きだと言ってくれた。
 そんな彼の気持ちも嘘だったの……?

 そんなわけがないと頭ではよくわかっていても、ネガティブ思考が得意な自分はどんどんと深みに嵌っていく。
 そうこうしている間に、唇が触れ合いそうな距離まで顔を近づけている姿を見たら、もう直視などできなかった。

「あらあら。お熱いわね……」
「っ!」

 私は茶化す店長さんに相槌を打つことすらできず、無断で助手席に乗り込んだ。
 シートベルトがカチンと止まる音を聞いたあと、瞳から涙が溢れ出て止まらない。
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