エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「今まで、ありがとうございました。店長さんに優しくして頂いた恩は、絶対に忘れません」
「待って!」

 このままここで別れたら、行方知れずになると危惧したのだろう。
 助手席から降りようとした私の手首を掴んで止めた彼女は、強い意志を込めた声音で言葉を発した。

「甥の不始末は、叔母である私の責任よ」
「店長さん……?」
「純司に何も告げずに姿を消すあなたを、黙って見送るなんて無理ですもの。お腹の子ごと、私が面倒を見るわ」
「そ、そんな……!」

 私はそこまでしてもらう義理はないと遠慮したけれど、彼女は本気だった。
 チャイルドロックを作動させて降りられないように閉じ込めると、一度は外したシートベルトをカッチリと音が鳴るまで嵌め込んだ。

「つらくて苦しい時は、1人で抱え込まないで? 2人なら、きっと乗り越えられるはずよ」
「店長さん……!」

 私は逃げるのを止め、彼女の胸に縋りつく。
 こうして、涙が嗄れるまで泣き続けた。
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