エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
「もう、行かないよ」
「やだやだ! おいしいケーキ、食べたーい!」
「涼花! 暴れないの!」
「ケーキ!」
「駄々を捏ねても、駄目なもの駄目!」
「やだぁー!」

 涼花はまるでこの世の終わりのように、ギャーギャーと大騒ぎし始める。

 ――もうすぐ、保育園に登園する時間なのに……。
 こんな状態では、先が思いやられてしまう。

「しゃあねぇなぁ……。オレが買ってきてやるよ」
「ケーキ!」
「涼花は、どんな奴がいいんだ?」
「おいしいの!」
「ブランドとか、わかんねぇのか?」
「初めて食べたの!」

 涼花は先程まで大泣きしていたのに、それが嘘のようにキラキラと瞳を輝かせて誠くんにケーキを強請る。
 しかし、子どもの知識だけでは到底正解には辿り着けそうにはなかった。

「澄花さん。種類とか……」
「ごめんなさい。涼花が言っているのが、ショートケーキだってことくらいしか、わからなくて……」

 困り果てた彼からもっとヒントはないのかと話を振られたが、答えを知るのはケーキを出してくれた大門寺さんだけだ。

 ――この子達の父親と偶然会ったなんて、言えないし……。

 申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、視線を逸らすしかない。
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