幼馴染のち恋模様
同じ頃、自販機の前________
ミーティングルームに梗介と瑠奈を残し席を外した3人は、休憩スペースに移動した。
ソファーがいくつか置いてあり、その一つに腰掛ける。社長は仕事の電話をしに外へ出ているため、蓮と二人きりだ。
蓮はチャンスだとばかりに葵の隣に腰掛けた。
「さっきは簡単にしか自己紹介できてなかったから改めて・・・梗介の大学からの親友、篠宮蓮です」
「こちらこそ、色々していただいたのにきちんとご挨拶できなくてすみません。梗介のつ、妻です、柚月葵と申します」
まだ全然言い慣れないので物凄くぎこちなくなってしまった。
「さっきの葵ちゃん格好良かったよ。頑張ったね」
「いえ、そんな・・・」
さっきのことはあまり記憶がない。だけどすごく偉そうなことを言った気がして逃げ帰りたい気分だ。
「俺さ、大学で初めて梗介と会った時、梗介とは一生仲良く慣れないと思ってたんだよね」
「えっ・・・?」
今の関係性からは思いもよらない言葉に驚く。
「なんかスカしてるイケメンで完璧超人じゃん?」
確かに梗介は初めてのことでも人並み以上に出来てしまう人だ。整った顔も相待って、誤解されることは多い。
全く努力をしていないとかではなく、物事の本質やコツを掴むのが人より得意なのだ。
「でもある時さ、スマホ見つめて泣きそうな顔してたの見ちゃった事があって・・・それからも同じ場所で花を見つめてたり、大事そうに本抱えてたり・・・普段のスカした感じじゃなくて、何かを探すような、待ってるような寂しそうな背中が印象的でさ」
「梗介がですか・・・?」
梗介にそんな乙女のような一面があったなんて・・・。
「そう。俺も最初別人かと思ったけど気になって声かけたんだよ、そしたら驚いた後にめちゃくちゃキレられて」
蓮は笑いながら続ける。
「邪魔すんなどっか行け!って。ひどいよね?でも、普段はクールだけど感情むき出しにしてる梗介に興味が湧いて、そこから一方的に関わるようになったんだ」
「怒られたのに興味が湧いたんですか・・・?」
「俺って人の顔色窺うのとか本性見抜くの得意なんだよね・・・俺に向けられるのって大体、恐怖とか媚びとか疑いみたいな濁った視線ばかりだったんだけど、梗介だけは真っ直ぐだったんだよね・・・あ、恋じゃないよ?俺女の子が好きだから安心してね?」
そこまで聞いてないです・・・。
梗介はそんな所でも人を一人虜にしていたのか。
「だからちょっかいかけまくってたわけ。本人はすごい迷惑そうにしてたけど」
クックックッと笑う蓮に苦笑いを向ける。
「それで、梗介を無理矢理飲みに誘った事があって、その日の梗介さ、なんかむしゃくしゃしてたのかすごい酔っ払っちゃったんだよね。その時に葵ちゃんのこと話してた」
「私・・・?」
「会いたいのに会えないんだ、って。梗介は忘れてるみたいだけど、葵ちゃんの名前連呼してて、ふっ」
蓮は思い出しているのか静かに吹き出している。
「だから葵ちゃんのこと間接的に知ってたんだよね。梗介の初恋で一途に想い続けてる女の子」
私たちの距離が離れていった時の知らない梗介。
「そこで謎も解けた。梗介がいつも一人でいたあの場所には・・・葵の花が咲いていた」
ドクンッと心臓が大きく跳ねる。
「泣きそうな顔で見ていたスマホには葵ちゃんの写真。大事そうに抱えていた本は葵ちゃんに貰ったもの」
瞳に透明の膜が張る。視界がぼやけて何度も瞬きを繰り返す。
「あいつはずっと葵ちゃんのことしか見てないよ。重いくらいにね」
とうとう涙が溢れてしまい、葵の手の甲に落ちる。
梗介が私を想ってくれていたことは言葉でも態度でも、これでもかと言うくらい示してくれる。
なのに・・・まだこんなにも想ってくれていたのかと心が愛しさで震えた。
私は、梗介の溢れんばかりの愛情を返せているだろうか。
早く会って伝えたい。私も負けないくらい梗介を想っていること・・・。