幼馴染のち恋模様
たかが数分離れただけだ。それに数メートルの距離しか離れていない。それでも無意識に足が急ぐ。
梗介に気づいた葵が、梗介だけに向ける笑顔で待つ。
「梗介!ロールケーキ一緒に食べよう」
嬉しそうにロールケーキを掲げて梗介を見る葵の腰をグッと引き寄せた。
「早く二人きりになりたい」
葵の耳元で囁くと顔を真っ赤にして怒っている。
周りから歓声が上がり冷やかされる。霜月の昔ながらの知り合いも多くいるため俺と葵のカップリングは美味しい餌になるらしい。
みんなで輪になって笑い合うこの時間は、かけがえのないこの時だけのもの・・・。
その時、脳裏に葵のウェディングドレス姿がぼやけて浮かんだ。背後には祝福する参列者の姿。
そうか、結婚式・・・。
「葵、結婚式挙げよう」
「・・・えっ!?」
思わず口から漏れ出た言葉に葵は驚愕する。
「急にどうしたの!?」
「なんか・・・葵のウェディングドレス姿が見たいし、みんなに祝福されて喜ぶ葵が見たくなった」
正直に答えると一瞬、葵が目を輝かせる。
「結婚式!呼んで呼んで〜」
「余興は霜月音頭に決まりだな!わははっ」
「葵ちゃんのドレス姿なんて想像しただけで泣いちゃうわ〜」
周りがわいわい盛り上がる中、葵は喜びを堪えるように唇を引き結んで戸惑っている。
「結婚式・・・いいの・・・?」
遠慮気味に呟かれる言葉に首を傾げる。
「もちろん。思いつくのが遅くてごめんな。葵が嫌じゃないならしよう、結婚式」
梗介の言葉を聞いてパァーッと花開くように満面の笑みになった。やっと葵の顔が華やぐ。
「嬉しい!梗介ありがとうっ」
この日一番の笑顔を引き出せたことに心の中でガッツポーズをする。
この愛い生き物を抱きしめて一日中撫で回したい。
「準備が大変だって聞くから一緒に頑張ろうな」
「うん!楽しみだな〜」
「「私たちにも任せなさい!」」
輪の中にいた母たちが挙手している。
俺たちよりも張り切る可能性が高いので要注意だ。
そんなこんなで【結テラス】のお披露目が済み、これから街へ馴染んでいくだろう。この場所で、たくさんの人が色とりどりの思い出を作ってほしいと思う。
葵とまた来よう。家族が増えたら、この場所がもっと違って見えるのかもしれない。これから葵と一緒にいろんな景色を見て行きたいとそっと期待が膨らんだ・・・。