メシ友婚のはずなのに、溺愛されてるのですが!?
人気のない廊下で、足を止めた和真さん。そして、振り向き私を見た。けれど、その視線には……怒りが混じっていた。
「ぁ……わっ私、和真さんを見に来ましたっ!!」
「……」
つい、大きな声を出してしまった。怖い声で怒られたくなかったから、というものもあるけれど……数日前の時は、驚いてしまいちゃんと喋れなかったから。だから今回はちゃんと喋ろうと思った。
「わ、私、和真さんの事よく知らないから、奥さんなのに、仕事姿だって見たことないし、全然知らないから……見に来ました」
「……」
「それと……勘違いさせたままにしたくなかったから」
「……勘違い?」
だいぶ、ドスの利いた声が、怖い視線と一緒に刺さってきた。こ、怖い……
け、けれど、ここで負けたら駄目だ。そう気合いを入れ、掴まれていた腕を払い、そして彼の両頬に両手をパチンとくっつけた。驚いたのか、だいぶ素っ頓狂な顔を浮かべている。よし、これで怖くなくなった。
「何自分の妻を疑ってるんですか?」
「……」
「私が浮気するとでも思ってるんですか? せっかく和真さんからご褒美のうにをもらうために頑張ってたのに、勘違いしないでください」
「ぁ、いや……」
「絶対に、私は和真さんと離婚する気は全くありませんから」
「っ!?」
その言葉に、和真さんは目を見開いた。
本当は、1年の約束だった。延長してもいいぞ、と軽く言われていたから。
けれど、私は1年で終わらせる気は全くないと言った。
「だから、和真さんが恥をかかずに隣に立てるよう頑張りますから。そのつもりでいてください」
「……マジか」
「マジです。もしかしてお酒入りました? この酔っ払い」
「言ったな?」
さっきまで怖かった和真さんの視線は、いつも通りに戻ってくれていた。
けれど、マジかですって? 私のファーストキスを奪っといてよく言えましたね。
「和真さんは嫌ですか? 私と一緒は」
「なわけないだろ」
そう言いつつ、私の手を払ってから今度は和真さんが私の両頬を包んできた。
そっか……嫌じゃ、ないんだ……一緒に、いてくれるんだ。
「男の面子丸潰れにだな。なんて事してくれてるんだ」
「もたもたしてるからですよ。あ、そういえば昨日七瀬社長から美味しい焼肉のお店を教えてもらったんです。うに食べた後に行きませんか?」
「……はぁ、そういう事か。やられたな……何冬真と凜華に嫉妬してるんだよ……」
あ、やっぱりあのスパルタ講義の食事会を見ていたのね。もしかして、凜華ちゃんは見えなかったのかな。私と冬真さんの二人しか見えなかったら……そうなるか。なるほど。
「嫉妬してくれる和真さんも私好きですけどね」
「おい、これ以上は言うな」
これ以上? 一体何を言うと思ってるんです?
「はぁ~、じゃあ、愛しの奥さん、この後うにデートはいかがですか?」
「喜んで!」
笑顔で、頬に手を添えていた和真さんの手に手を重ねた。うん、とっても大きくて温かい手だ。
「元気のいいところも、俺は好きだよ」
「だけ?」
「んなわけないだろ。全部だ」
好き、だなんて言葉を和真さんから貰うのは少し恥ずかしいけれど、それでもやっぱり嬉しい。