わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
「次の対戦を発表します。グスタフ皇国と対戦するのは、D国代表です」

オオトカゲが相手か。
アンバーは鎧と脛当てのひもを確認した。

まず、矢で目を狙う。それから、剣で首を突き刺す。

アンバーは目を閉じ、一連の動きをシュミレーションした。

「試合開始!」

側近の旗が振られた。

トカゲの動きが思ったより早く、アンバーが何とか塀によじ登った。

トカゲは紅い舌をペロペロと出し、塀を登ろうとしたが、爪がひっかからず下でウロウロしている。

アンバーは、ぎりぎりで塀の上から弓を放ったが、トカゲの鱗が固く、矢が突き刺さらない。

「試合終了」

結果は時間切れで、グスタフ皇国の判定負けが決まった。

「くそっ!あんなに硬いとは予想外だった」

アンバーは自分の研究不足を悔いていた。

もっと綿密に戦略をたてなくてはダメなのだ。

その後の試合でも、アンバーはかなり頑張ったが、よくて引き分け、勝利がつかめず、下から2番目という結果に終わった。

使い魔がいないわりには、よく検討した、皇帝はそう評価していた。

魔女の国が最下位だったのは、言うまでもない。

試合が終わり、各国の子どもたちは笑顔で観客の声援を受け、ねぎらいを受けていた。

アンバーも自分の応援団に、手を振り答えたが・・・
魔女の国の応援席は、ぽっかりと空いている。

クラリスを応援する人は・・・誰もいないのか。

A国の女の子に、キャンディーを渡した時の、笑顔の意味を考えていた。
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