わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話

交流会3日目

<交流会3日目>

3日目は、馬術競技。

競技は単純、いっせいにスタートして、ゴールした順番に得点が得られる。

各国、選りすぐりの名馬を、準備してきている。

A国は黒毛 B国は白 C国は栗毛 D国は鹿毛でいなないたり、脚を踏み鳴らしたりで戦闘態勢だ。 

グスタフ皇国のアンバーの馬は、白に灰色が入っているもので、軍隊の伝令に使う最速の馬だ。

アンバーも馬は得意で、小さい時から仕込まれている。

最後にクラリスの馬が登場した時、観客たちがざわついた。

なんと、ピンク、それもショッキングピンクの馬で、たてがみには色とりどりのリボンが結ばれていて、馬場に入場してきたのだ。

さすが魔女の国、度肝を抜くものだと、みんな妙な所で納得はしているが。

クラリスの顔は、だいぶ腫れが引いたようだが、馬と同じでピンクのまだら模様だ。

アンバーは複雑な思いで、馬上から観客席を見た。

ミエルが心配げな顔をして座っているのは、いつものことだが、クラリスの使い魔、イーディスの姿がない。

使い魔が、主人をここまで放置しておいてよいのか?

主人のクラリスもマイペースで、予測がつかない動きをするのだが・・・

係の召使が旗を振って、スタート地点に馬たちを誘導している。

アンバーの隣に、クラリスのピンクのハデハデ馬がついた。

クラリスはまっすぐ前をむいており、集中している。

今日は真剣にやるつもりなんだな、そう思うと、アンバーもたずなを握る手に力が入った。

6頭の馬が、一斉に並んだ。

スタートの旗が振られたと同時に、砂煙をあげて馬が疾走する。

が、まずアンバーが先頭を取った。

クラリスの馬がリボンをたなびかせて、なんと2番手についている。

そのままぐんぐんスピードを上げて、アンバーと並んだ。

「え!えええ?」

その場にいる観客全員が、手で口を押えた。

クラリスの馬の頭から、にょきにょき角が生えたのだ。

しかもクラリスの片手は、角を握っている。

馬に角はないっ!?

いや、ユニコーンなのか?

なんとクラリスが、失踪する馬の上に立って、にこやかに片手を振った。

再度手を振ると、馬の胴からびゅんと大きな翼が出現した。

「ペガサス??」

クラリスの馬が翼を大きく上下に動かすと、その馬体はぐんと空に放たれ、そのまま飛んで行ってしまった。

アンバーは・・・目の前で衝撃映像を見たので、落馬してしまった。

順位は、アンバーが5位、クラリスはルール違反で最下位。

グスタフ皇国の皇帝はそれを見て、思わず笑ってしまった。

が、「魔女の国はすごいな・・・」と感心しきりだった。
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