わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
ポキン・・・アンバーの足元で、枯れ枝が折れて微かな音を立てた。

猫が振り向き、丸い目でアンバーをじぃっと見ると、次の瞬間、4本足で四方に退散した。

クラリスは、まだ魔法の世界にいるようで、立ったまま動かない。

風が吹き、時間が動き出した合図をすると、アンバーは咳払いをした。

クラリスがようやく目がさめたように、ゆっくりとアンバーの方を見た。

アンバーは、クラリスの前に歩み出た。

なぜ、自分がここに来たのか、本来の目的を告げねばならないのだ。

「クラリス、君に言っておきたいことがある」

「なに?」

クラリスの口調は、そっけないもので、それが、アンバーの怒りの感情に火をつけた。


「もっと真面目にやれよっ!君のせいで交流会が台無しだっ!」

思ったより強い口調になったので、アンバーは耳まで赤くなったのを感じた。

「楽しくないもの・・・」

その一言が、アンバーの怒りにさらに油を注ぎこんだ。

「君も魔女の国の代表だろう!?
来ているみんなは、それぞれ国を代表している。
そして将来は、国を担う立場だ!」

「そんな事、わかっているけど・・
こんな事、真剣にやること?」

クラリスの視線は、アンバーを通り越してもっと先を見ている。

それから、小さくため息をつくと、アンバーの横をするりと抜けて走り去った。

取り残されたアンバーは怒りのやり場がなく、木の幹を拳で殴った。

「クラリス・グランビア あいつは許せない!!」

「楽しくない」という一言は、胸に突き刺さる。

参加者はみんな同じ思いだろう、それはわかる。自分だって・・・

「くそっ・・・なんでだよぉ・・・」

アンバーはもう一度、幹を殴りつけた。

感情的ではなく、もっと、別の言い方をすればよかった・・・後悔の怒りだった。
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