わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話

交流会5日目

<交流会5日目>

5日目は、音楽や踊りの発表会。

王宮の音楽室が会場で、皇帝が窓際の大きな椅子に座っている。

6名の子どもたち・・いや5名しかいない。

側近が大きな声で、音楽室内の観客に向かい呼びかけていた。

「クラリス様は・・・いらっしゃいますか?」

「クラリス様・・・クラリス様?」

廊下でも探している声がする。

アンバーは、苦い薬を無理やり飲んだ時と同じ気持ちが、こみ上げてきた。

その時、窓のカーテンが大きく波打ち、紅い髪の男が窓枠に立っていた。

クラリスの使い魔、イーディスだ。

イーディスは軽やかにじゅうたんに着地すると、皇帝の前で片膝をついた。

「ご連絡いたします。クラリス様はご気分が悪いとのことで、本日は欠席です」

イーディスは皇帝に一礼すると、また窓から出て行った。

主が主なら、使い魔も大問題だ。

礼儀も何もない、無礼な奴だ。

アンバーはうつむいて、膝の上でこぶしを握り締め、怒りを押さえている。

皇帝はしかたがないというように、片手を上げた。

「それでははじめよう」

子どもたちは前に出て、歌や楽器、踊りを披露する準備をはじめた。

今回は、アンバーが最後だった。

ミエルとクラビィーアを弾くことになっていた。

ミエルの演奏は、聞くものの心をとろかしてしまうほど、美しい旋律を生み出す。

アンバーとの連弾のため、2台のクラビィーアが準備された。

♪~♪

美しい旋律が、波のように寄せては消える。

弾きながら、アンバーは思い出していた。

ああ、そうだ。
あの池のほとり。

クラリスの踊りにこの旋律をつけたら・・・

花や木の葉が舞い散る中、金の髪が輝く、ゆらめく。

アンバーは弾きながら、魔法の世界の余韻に浸った。

こんな想いは初めてだ。

演奏が終わると、ミエルがアンバーに向けて微笑み、5人の中で最も大きい拍手をもらった。

上出来といえよう。

観客に頭を下げ、席に戻ろうとした瞬間、カーテンの影にいたクラリスの姿が見えたが、すぐに消えた。

罪悪感、後味の悪さ。

自分の手で美しいものを壊した・・・そんな気持ちが苦い。

今回の結果は、アンバーが1位だった。
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