わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話

アンバーとイーディスの戦い

<アンバーとイーディスの争い>

オレンジの夕日が落ちかけて、薄暗い帳が降りようとする時間だった。

演奏会が終了し椅子も片づけられて、ガランとした音楽室には誰もいない。

アンバーは一人、クラビィーアの前に座っていた。

あの、魔法の余韻にもう少し浸りたかったからだ。

クラリスは明日、来るのだろうか。

一方的にあんな言い方をしなくても、もっと、冷静に話を聞いてもよかったのではないか。

クラリスにも、事情があるのかもしれないし・・・

アンバーは、誰もいない魔女の国の応援席を思い出した。

楽譜を戸棚に戻さなくては、アンバーが戸棚の陰に入った時、音楽室の扉が開いた。

「だめよ!」

「だめじゃない・・」

その男女の会話にアンバーはすぐに、カーテンの陰に隠れた。

そっと覗くと、ミエルとイーディスが、何か言い争っている雰囲気だ。

イーディスがミエルの手を握って、抱き寄せた。

「何をやっているんだ!」

アンバーが大きな声をあげ、戸棚の影から飛び出た。

その声の主に反応して、ミエルがすぐに飛びのいた。

アンバーは怒りをたぎらせて、イーディスに詰め寄った。

「うちのエルフに、何をするんだっ!」

「はぁ、うちのエルフですか・・
グスタフ皇国の皇太子さま」

イーディスはまったくバカにしたように、アンバーの視線を受け止めた。

「そうだ!うちのエルフだ!そう言って何が悪い!」

イーディスは、教師が生徒に諭すように、上から目線で

「おまえはミエルの献身を、まったく理解していない。
それでも主人というのか。まったくもってお坊ちゃまは困る」

「お願い!イーディス、やめて。それ以上言わないで!!」

ミエルの、悲鳴に近い声が上がったが、イーディスがアンバーのネクタイをつかんだ。

「お前たちはエルフを恐怖で支配しているだけだ。心臓の一つを取り上げてな。
エルフは所有物じゃない!!」
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