わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
イーディスの問題
早朝、クラリスはかごを持って、池のほとりの草むらに顔を突っ込んでいた。
この国の植物は、魔女の国とちょっと違っておもしろい。
それに、薬草になりそうなものを、探すチャンスなのだ。
漆(うるし)では大失敗したが・・そう言えば、きのこも難しいな。
クラリスが唯一、この国でモチベーションが高いもの。それは植物採集だった。
薬草リキュールの、新しいバージョンを作りたい。
あと、草木染めもやってみたい。
春の色が作れたら、どんなに楽しいだろう。
この国では植物に詳しい人がいるのだろうか・・ミエルなら何か知っているかな。
ああ、それに、ミエルとアンバーのクラビィーアの演奏はきれいだった。
音が、それぞれ色彩を帯びて空中に漂う感じ、シャボン玉みたいに風に乗って、浮かんで消える。
魔女の国ではクラビィーアはないから、はじめて聞いた。
グスタフ皇国の人があの指から美しい音を作り出すなんて、ちょっと驚きだわ。
いろいろ考えながら、クラリスは大きな木の見えるところまで来た。
木の根元に、誰か座っている。
「イーディス!!」
クラリスが手を振った。
イーディスは無言で、力なくクラリスに手を振った。
「・・・・」
こんなことは珍しい。
<こっちに来い>と言うのか、<あっちに行け>というのかわからない。
ただ、いつもと様子が違うことに、クラリスはすぐに気が付いた。