わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
「それでは、出発してください」

係の声で、地図を片手にアンバーが先に歩き、少し遅れて、クラリスがついてきた。

アンバーは速足で歩くが、クラリスはまるで散歩をするようにぶらぶら歩く。

ところどころで、立ち止まって花の匂いをかいだりしている。

森を抜けて、もうすぐ山道に入るところで、アンバーは振り返った。

「きみはここで帰れ。その恰好じゃあ山に入るのは無理だ!」

クラリスは、ちょっと考えるようであったが

「棄権するの?グスタフ皇国の1位は取れなくなると思うけど」

そうなのだ。

二人一緒でなければルール違反になり、何の意味もなくなる。

「わかった!君の好きにしろ」

アンバーは、怒りをこめて答えた。

そろそろ、どこかに指示書があるはずだ。アンバーは周囲をキョロキョロ見渡した。

木の枝にくくりつけてあったりとか、枯れ葉の下に隠すとか・・・

「あったぁ!」

突然、クラリスが声をあげた。

「どこに!?」

「この花よ、見て、こうするの」

クラリスは、茂みにある小さなラッパ形の白い花を、一輪摘み取り、根元を口にくわえた。

「蜜が甘いの。疲れが取れる」

「まったく・・」
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