わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
アンバーの開いている片手がクラリスの髪に触れようとしたが、宙に泳ぎ、手元に垂れた。

クラリスを抱きしめたい、その痛みを分かち合いたいと思ったが、今の自分に何ができるのだろうか・・・

「私たちは成人に達したら、いろいろと制限があって、外にも自由にでられない。

だから今のうちに、美しい物をたくさん見ておきたい。
あなたのクラビィーアも美しかったわ。
でも、音は消えてしまうのよね」

「そのうち、魔女の国も消えて・・
なくなると思う・・」

クラリスは、膝に顔をつけたまま言った。

「グスタフ皇国に攻められたら、
ひとたまりもないわ。
そうなる前に、みんな消してしまう・・・お母さまはたぶんその覚悟なのよ」

クラリスの肩が震えている。

「そんな話は・・・ないと思うけど」

アンバーは答えながら、皇帝が極秘で情報を集めているのは、何か意図があるのか、考えていた。

確かに魔女の国と隣接しているのは、グスタフ皇国だが、魔女の国は鎖国状態なので謎が多い。

「イーディスは代々、グランビアの家の使い魔なの。私個人の使い魔ではないわ。
それに、私たちと対等な立場・・
ううん・・イーディスが主人を選ぶのかな。

そのへんの魔女よりも、魔力が強いし」

アンバーは背筋がぞっとした。
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