わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話

交流会最終日

最終日、城の大広間で交流会の成績発表がなされた。

グスタフ皇国が1位で、主催国としての面子を保った。

もちろん、最下位は魔女の国だ。

アンバーは、会場でクラリスの姿を探したが、どこにもいない。

帰還してすぐに、ミエルの心臓の返却手続きをとったので、その報告をしたいと思っていた。

父上には何か言われるかもしれないが、その時は、薬草リキュールで話をつければいい。

クラリスはあの池のほとりにいるのではないか、アンバーは会場を抜け出した。

池のほとりに、誰かたっている。

クラリスではない、長身の男だ。

「イーディス!!」

アンバーは、思わず大声をあげた。

「これは、これは、グスタフ皇国の・・王子様」

イーディスは、大げさな身振りで頭を下げた。

「だめよ!イーディス!ちゃんとお礼を言わなくっちゃ」

木の影から、ミエルが姿を現した。

「ミエルを開放していただき、ありがとうございます」

「君のためじゃない。クラリスと約束したからだ」

アンバーは冷静に言った。

イーディスは、ミエルの手をしっかり握っている。

幸せそうなミエル、こんな美しい笑顔を見たことがない。

今まで恐怖で支配をしていたのか・・・アンバーは、ふいっと視線をそらせた。

「さしでがましいですが、クラリスはいい子です。
それにあと1年で、とびっきりの美人にはなるでしょう。」

イーディスは皮肉っぽく続けた。

「成人になれば、あなたと会う時、必ずババァの姿になっている。
非常に残念ですが」

「だから・・何が言いたい!」

本当にこの使い魔は、イライラさせるのが上手い。

イーディスは「こいつは本当にバカだ」と言いたげな顔をして、付け加えた

「今しかチャンスがないと言っているのです。
今、クラリスは弱気になっているし、つけこむチャンスかな」

「つけこむなんて!!グスタフの男は、卑怯な真似はしないっ!」
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