わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
アンバーとクラリスの約束
クラリスは、小高い丘の上に立って、グスタフ皇国の街を眺めていた。
城の城壁のあちらこちらに、たくさんの松明の明かりが燃えて、光と陰が織りなす幻想的な風景だ。
アンバーは、ちゃんと約束を果たしてくれた。
イーディスがとろけるような、幸せいっぱいの顔をしていたのは、かなりむかつくが。
グランビア家の使い魔と良好な関係をつくるのも、主人としての務めだと思う。
クラリスは、小さくため息をつくと、胸からペンダントをはずした。
もう少しで暗くなるから、ペンダントを返すには、フクロウを使うのが一番いいだろう。
彼らは夜目が聞くから。
ちゃんと言う事を聞く、フクロウを選ばなくてはならない。
とても大切なものを運んでもらうのだから。
クラリスがフクロウを呼ぶために、指笛を吹こうとした時、
ポキン・・・ポキン
後ろで、枯れ枝を踏む音が聞こえた。
クラリスが、驚いて振り向くと、そこにアンバーが立っていた。
「クラリス・・それはまだ返さなくていい・・」
そう言うとゆっくりと、クラリスに近づいた。
「アンバー、ちゃんと、約束を果たしてくれてありがとう」
クラリスはペンダントを、アンバーに差し出した。
「それに・・・謝らなくてはならないの。穴に落ちたのは、イーディスが仕組んだ罠だったの」
「罠?」
「私が、ミエルの心臓を返すように、説得する時間をつくるためにやったことなの」