わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話


「今年の交流会の、参加者情報を報告してくれ」

家庭教師は、皇帝の前にひざまずき、6枚の紙を差し出した。

皇帝は6枚の報告書を、机の上に並べると、一番気がかりなことを質問した。

「アンバーは、どんな仕上がりになっている?」

家庭教師はすぐに答えた。

「アンバー様は、すべてにおいて、真面目に取り組んでいらっしゃいます。

特に優秀なのは、幾何学や地理、最近は土地の測量や治水工事関係にもご興味があるようです」

皇帝は、報告書に目を通しながら、自分のひげをねじり上げた。

「あいつは、小さい時から地図を見るのが好きだが・・・武術や戦闘はどうなのか?」

「剣はちょっと心配です。体もまだ、できていませんし。

グスタフ皇国の標準から言えば、中の下くらいでしょうか。

練習を欠かさず、よく努力をなさっているのですが。ですが、弓と馬術は申し分ありません」

「剣はなかなか結果がでない・・というわけか。まぁ、あいつの線の細さは、亡くなった王妃に似ているからな」

グスタフ皇国の男子は、幼い頃から武術で鍛えられ、剣、弓、馬術は必修だ。

アンバーはその点で、困難さを抱えているといえよう。

家庭教師が続けた。

「アンバー様は、総合では1位を取ると思われます。
他の国の武術や戦闘力は、たいしたことはないと情報を得ているので。」

皇帝の目が、6枚目の報告者に釘付けになった。

<魔女の国代表・クラリス・グランビア>

グランビア家の次期当主、そしてエリーゼの娘だ。

絵姿は・・ついていない。

どんな娘なのだろう。母親に似ているのだろうか。

報告書には名前しか書いていない、そっけないものだった。
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