わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話
エリーゼは、困惑気に皇帝を見た。

「グランビアの使い魔が、うちのエルフに手を出した・・問題だろう?
それに、薬草リキュールを、もっと買いやすくしてほしい。
これは国同士の話し合いなのだ。」

皇帝は笑顔で、圧力をかけてくる。

「もう、道を閉じるのだろう。私は戻ろう。」

皇帝が去ろうとすると、エリーゼは、控えめにマントの裾を引っ張った。

「明日、薬草リキュールとはちみつパイをお持ちします。
あと、うちのイーディスの件も、おわびをしなくては・・・」

エリーゼは額に手をあてながら、あきらめたように言った。

「それは楽しみだな。では、明日必ずここで」

クラリスが、母親に紋章入りのペンダントを渡すのを見て、皇帝はうなずきながら微笑んだ。

「そうだな。グランビアの当主、あなたが持っていたほうがいい」

クラリスはポケットに入っている、もう一つのグスタフ皇国の紋章入りペンダントにそっと触れた。

湖の水面が、夕日を受けて輝きを増すと、皇帝は馬に乗り街道の道に戻って行った。

そして風が吹き、魔法で止まっていた時間が、ゆっくりと動き出した。
< 52 / 56 >

この作品をシェア

pagetop