わがままな使い魔のせいで、恋と穴に落ちました・・・という魔女のお話

成人式の舞踏会

成人式の舞踏会の主役は、アンバーだ。

皇太子の正装をして、多くの来賓客と挨拶をかわしている。

アンバーは笑顔を絶やさないようにしながらも、クラリスの姿を探した。

クラリスも、一か月後に成人の儀式が行われると聞いたが、未成年扱いだから、保護者と一緒だろう。

まさか、老婆の姿だったら困るが・・・


クラリスがカーテンの陰から小さく手を振って、アンバーに合図をした。

白とグリーンの花柄レースのドレス、腰には深緑のサッシュリボンが揺れている。

金茶の髪に白い花もゆれて、会場にいる誰よりもかわいい、とアンバーは思った。

そして、控えめに、手を振った。

クラリスの隣に座っているベールをかぶった女性は・・たぶんクラリスの母親だ。

最後の曲の紹介がなされると、アンバーはまっすぐクラリスの側に行き、片膝をついた。

「最後の曲を・・君と」

クラリスは少しはにかんで、うなずいて立ち上がると、広間の中央から人がはけて、今日の主役のための場が開いた。

曲が始まると、クラリスはアンバーと踊り始めた。

グスタフ皇国の皇太子のお相手は、魔女の国グランビア家の次期当主なのか。

周囲がざわつきはじめた時、曲が終わり、アンバーとクラリスは招待客に向けてお辞儀をした。

「最後にもう一曲、追加をしてもらおう」

皇帝が椅子から立ちあがり、楽団の指揮者に合図をした。

これは予定外の事で、招待客たちは顔を見合わせている。
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