【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜



 準備? お出かけ? 心の中で、また穂貴さんに会えるんだと思ったら嬉しくなった。
 でも、すぐに現実がよぎる。服がない。私なクローゼットは、質素なものばかり。


「旦那様、あの私……外に着ていく服がないんです。以前のように、お嬢様のお下がりをいただけませんでしょうか? 昨日のような立派じゃない服でもいいんです、けど」


 そう言うと、旦那様はポカンとして「あ、そうだな」と今思い出しましたと言うように呟いた。その表情を見て、心の中で少し傷つく。
 私の生活なんて、本当に興味の中にもなかったんだ。でも、仕方ない。私は本当の娘じゃないし、引きこもっていたのだからきていく場所もなかった。
 
 そうして、その日の夕方には奈津子お嬢様からお下がりが数着届けられた。
 箱を開けると、綺麗な服が並ぶ。見たことのない上質なものばかりで私にはもったいないくらいの服やアクセサリーが数種類が入っていた。





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