【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
怖いくらいに、穂貴さんなしではいられない体になってしまっている。朝起きて彼の顔を見ないと、不安で胸がざわつき、夜眠る前に彼の声を聞かないと、孤独が再び襲ってくる気がする。この依存が、喜びなのか、弱さなのか、自分でもわからない。心の奥で、穂貴さんを失う恐怖が常にくすぶり、毎日の小さな幸せをより鮮やかに感じさせた。
ご飯の配膳をしながら、そんなことを考えていると――突然、後ろから優しく抱きしめられた。
「……っ、ほ、穂貴さんっ」
体がびくっと反応してしまう。彼の腕が私の腰に回り、胸板が背中にぴったりと寄り添う。
穂貴さんの体温が、薄いエプロン越しにじんわりと伝わってきて、息が止まりそうになる。シャンプーの爽やかな香りと、ほのかに残る朝のコーヒーの匂い。
すべてが彼そのもので、私を包み込む。この温もりに触れるたび、心が溶けていくような感覚に襲われるのに、同時に恥ずかしさが爆発して、耳まで熱くなる。嬉しいのに、こんなに素直に喜べない自分がもどかしい。もっと強く抱き返したいのに、手が動かない。心の中で、喜びの波が押し寄せ、涙がにじみそうになる。
こんなに愛されている実感が、胸をいっぱいに膨らませるのに、過去のトラウマがそれを押し返す。如月家での冷遇が、こんな優しさを信じにくくさせる。穂貴さんの腕の中で、幸せと不安が渦を巻き、息が浅くなる。