【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
「……この繰り返しで糸が織り重なって、織ったその人だけの唯一無二の表情が生まれるんだ。たとえ同じ糸、同じ図案で織っても、人によっては違う表情を見せてくれるんだ。美宙ちゃん、ここに座って」
穂貴さんの言葉に、織物の奥深さを感じる。同じ時間を過ごしても、私の感じ方と彼の感じ方は微妙に違う。でも、それが重なり合って、二人だけの特別なものを生み出していく。そんなロマンチックな想像をして、頰が緩む。心の中で、穂貴さんとの未来を思い浮かべ、胸が温かくなるのに、すぐに現実の不安が割り込んだ。
この唯一無二が、永遠に続く保証はない。そんな儚さが、喜びをより深くする。