【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜



 藤乃家は、旧華族の末裔だ。確か、伯爵の位を賜っていたらしい。その名残で今も当主だとか、そういう古いしきたりが残っている。そういうのは弟は嫌いなのだ。俺も、正直面倒くさいと思っている。でも、それは仕方ないことだ。


「貴斗、久しぶり」


 俺はグラスを傾けながら、弟の顔を見る。貴斗の目には、いつも俺への信頼が宿っている。それが、俺の心を少し軽くする。


「そうだ、美宙さんとはどうなの? 強引に、同居進めたんでしょ?」


 貴斗の言葉に、俺は少し苦笑した。強引だったのは認める。でも、彼女を如月家から引き離したかった。

 あの家で、彼女がどんな目に遭っていたか、想像するだけで胸が痛む。


「あぁ。めちゃくちゃ可愛い……幼い頃と変わらず、純粋で」


 心の中で、彼女の顔が浮かぶ。あの純粋さが、俺の初恋を呼び起こす。でも、今の彼女は俺のことを、ただの婚約者としてしか知らない。それが、切ない。もっと深く繋がりたいのに、過去の壁が立ちはだかるのだ。


< 45 / 102 >

この作品をシェア

pagetop