【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜



「純粋かぁーうちでやっていけるかな、美宙さん。元々は旧華族の末裔だとはいえ本人はそのことを知らないんでしょう?」


 貴斗の指摘に、俺は頷いた。彼女の出自を隠すのは、彼女を守るため。でも、いつか真実を伝える日が来るのか、不安が募る。


「そうだな。如月の家では、監禁されていたみたいだ。本人は自覚はなくて、不自由なく過ごさせてもらったと言っているが……本当なら鷹司家の姫君なのにな」


 実のところ、彼女……美宙ちゃんは俺らと同じく旧華族の末裔だ。彼女の本当の苗字は、鷹司。
 鷹司家は、華族制度廃止前は公爵の爵位を持ち皇族の姫君が降嫁をした家でもある。だがなぜ、そんな由緒ある家の姫・美宙ちゃんが施設で育ち如月家にいるのかは、彼女が幼い頃に遭った事故が原因だ。

 その事故で鷹司家当主である美宙ちゃんのお父様と奥様……美宙ちゃんのお母様は亡くなってしまった。

 美宙ちゃんは助かったのだが、記憶をなくし行方がわからなくなった……それを知った時は彼女がどこかの施設に預けられた後だったのだ。心の中で、あの事故の記憶が蘇る。彼女を失った喪失感が、俺の心を蝕む。あの時、もっと早く彼女を探せていたら……そんな後悔が、夜毎に俺を苛む。
 でも、今の彼女を幸せにするのが、俺の贖罪だ。


「彼女には言うのか? 今だに記憶はないんだろう……兄さんにとっては初恋の女の子でも、彼女はあったことないことになってるしなぜ自分が兄さんと婚約できたかわからないんじゃないのかな」


 貴斗の言葉が、心に刺さる。確かに、彼女は俺のことを覚えていない。それが、俺の最大の痛みだ。


「それはそうだな、だが。一度は結婚する約束をした仲なんだ。もう一度惚れさせるよ」



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