【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
食べ始めて十五分ほどでパフェはお腹の中に入ってしまい、その後紅茶を注文して二人話をする。お母様の穏やかな声が、心地いいのに、会話の行方が気になって、胸がざわつく。
「今回、お茶に誘ったのは一緒にパフェを食べたかったのもあるけど話したいことがあったからなの」
「はい」
「えっと、確認なのだけど藤乃家が旧華族だってことはご存知なのよね? きっと縁談を持って行った時に聞いてるかなって思うのだけど」
「はい、それは。ですけど詳しくは……」
確か旦那様が『旧華族が〜』と言っていた。お母様の言葉に、心の中で少し緊張する。旧華族の家柄……それが私にどんな影響を与えるのか、不安が募る。
「そうなのね、良かった。藤乃家は夫が早くに当主の座を譲ったから今の当主は穂貴くん。旧華族の嫁である私たちはね、常に後継者を産むことを言われるわ。旧華族の血を、後世に残すために必要なことね……だから、あなたには、結婚前に妊娠してもらいたいの。そうすれば、世間の目は、あなたに厳しくならない」
「にん、しん……」
お母様の言葉が、心に突き刺さる。妊娠……子供を産むこと。想像したこともなかったのに、突然の提案に、胸がざわついた。嬉しい? 怖い? 穂貴さんの子供を宿すなんて、夢のようなのに、現実味がなくて混乱する。
如月家の養女として、ただの役割を果たすだけだと思っていたのに、今は穂貴さんを好きになっていく自分がいる。この提案が、愛の証なのか、それとも家系の義務なのか、わからなくて胸が痛んだ。