【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
「えぇ。ひどいことをいう母親でごめんなさい。私はどちらでもいいと思ってるけど、子供ができちゃえばなんか文句を言ってくる連中は減るはずだから」
「そうですよね……穂貴さんと、話し合ってみます」
子供のことは考えてはなかったけど、私が藤乃に嫁ぐことになったのは旦那様が旧華族の血を欲しがったからだ。きっと旦那様は今度は子供を求めて来るだろうと想像できる。
心の中で、複雑な感情が渦巻く。穂貴さんの子供を産む……それが私の役割になるのか。でも、穂貴さんの優しさを思い浮かべると、少し温かくなる。でも、怖い。体が変わる不安、母親になれる自信のなさ……そんな思いが、頭をぐるぐる回る。
「それがいいと思うわ、穂貴くんも色々思ってると思うし……それにあなたとの子なら、血が強くなるわ」
「血が強くなる?」
「えぇ、だって。あなたは施設から如月家に引き取られる前は旧華族の娘だったんだもの……」
私が、旧華族の末裔? そんなの知らない………じゃあ、穂貴さんは私のこと知ってるはずだよね?
どうして言ってくれないのだろう? お母様の言葉が、頭の中で反響する。旧華族の娘……施設育ちの私が? 衝撃が胸を貫き、息が止まりそうになる。
過去の記憶が曖昧で、事故のことを思い出すのに、こんな秘密があったなんて。穂貴さんが知っていたなら、なぜ黙っていたのか。心の中で、裏切られたような気持ちと、もっと知りたい欲求が交錯する。涙がにじみそうになるのに、必死に抑える。
この事実が、私の人生を変えるのか……不安が、胸を締めつける。
そんなことが頭をぐるぐるしていたけど、時間は過ぎていって帰る時間になった。穂貴さんが迎えにきてくれて、約束のスマホを購入してくださってから家に帰った。
スマホを手にした瞬間、新しい世界が開く予感がするのに、心は重い。お母様の言葉が、頭から離れない。穂貴さんに聞きたいのに、聞けない。
家に着いて、彼の顔を見ると、胸が痛んだ。