【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜



「体調悪いなら休むかい? そこに小さいがソファあるし」


 穂貴さんの声が優しくて、心が少し溶けそうになる。心配してくれる目が、愛おしくて、胸が熱くなる。でも、それがまた葛藤を増す。こんなに優しいのは、何か裏があるのではないのかと聞きたいのに、聞けない。関係が壊れるのが怖い。
 だけど、切り替えないと……彼に迷惑をかけたくない。


「いえ、大丈夫です……ちょっと考え事を。でも、切り替えます」

「そう? じゃあ、引き続きよろしくね。何か困ったらすぐに言って」

「はい、ありがとうございます……」


 穂貴さんの言葉に、頷きながら気合を入れ直して腕まくりをする。媒染剤を鍋に入れ、作業を再開した。でも、心の中ではまだお母様の言葉が渦巻く。
 だけど穂貴さんが知っていたなら、なぜ黙っていたのだろうか?私のことを本当に愛してくれているのか、それとも血筋のためなのだろうか。


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