【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
第7話【記憶の欠片】



 朝の光がカーテンの隙間から差し込み、目が覚めた。穂貴さんの腕の中で目覚めるのは、三日は続いている。あの夜から、私の体は穂貴さんの温もりを覚えてしまって、朝になると自然と彼の胸に顔を埋めている自分に気づく。

 恥ずかしいのに、幸せで、胸がきゅんとする。穂貴さんの心臓の音が耳に響き、規則正しい鼓動が私の不安を優しく溶かしてくれる。
 でも、毎朝同じように、お母様の言葉が頭をよぎる。


 『――あなたは施設から如月家に引き取られる前は旧華族の娘だったんだもの』


 あの衝撃から、もう一週間近く経つ。だけど、穂貴さんに聞けない。
 聞きたくないような、聞きたくてたまらないような、複雑な気持ちが胸を締めつけている。穂貴さんが私の過去を知っていて、それでも――いや、だからこそ私をここに迎えたのだとしたら? 
 政略以上の何かがあるのかもしれない。でも、もしそれが“血筋”のためだけだったら……そんな疑いが、心の奥で黒い影を落としている。

 でも、穂貴さんの寝顔を見ると胸がきゅんとして、愛おしくてたまらない気持ちになる。涙がにじむ。好きだからこそ、怖いのだ。

 この人が私を本当に愛してくれているのか信じられなくて辛かった。



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