【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
穂貴さんの手が、ぴたりと止まった。部屋が静かになる。心臓が激しく鳴り、息が苦しい。
「……そう」
穂貴さんの声が、少し低くなる。私は体を起こして、穂貴さんの顔を見た。穂貴さんは目を逸らさず、私を見つめている。その瞳に、痛みが映っている。
「穂貴さんは……知ってたんですか?」
「……うん」
その一言に、胸が締めつけられる。知ってた。やっぱり。心が引き裂かれそうで、涙が溢れる。裏切られたような、でもどこかで予想していた痛み。
「どうして……教えてくれなかったんですか?」
声が震える。穂貴さんはゆっくりと体を起こし、私の手を取った。その手が少し震えていた。
「ごめん、美宙ちゃん。教えるべきだった。でも……怖かったんだ」
「怖かった?」
「うん。美宙ちゃんが記憶を失ってるって知ってて、それで俺が昔のことを知ってるって言ったら……君が混乱するんじゃないか、俺のこと嫌いになるんじゃないかって」
「昔の……こと?」
穂貴さんは深呼吸をして、私の手を強く握った。温かくて、心が溶けそうになる。
「美宙ちゃん……俺たち、昔、会ってるんだ。幼い頃に」