【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜


 穂貴さんが私を抱きしめ、その大きな腕が私の体を優しく包み込む。朝の柔らかな光がカーテンの隙間から差し込み、部屋全体を優しい金色に染めていた。
 穂貴さんの唇が私の額に、頬に、そしてそっと唇に触れる。そのキスは、まるで失われた時間を埋めるように優しく、深く、愛情に満ちていて、私の心の奥底まで染み渡る。記憶が戻ったばかりの私は、まだ少し震えるような不安を抱えていたけれど、このキスがすべてを溶かしてくれる。穂貴さんの息づかいが近くて、温かくて、胸が熱くなる。

 再び体を重ねる瞬間、私は穂貴さんの瞳を見つめた。
穂貴さんの手が私の背中を優しく撫で、肌が触れ合うたびに、電流のような甘い感覚が走る。体が溶け合うように近づき、心が完全に一つになる。その瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、涙が自然と溢れ出した。それは悲しみの涙ではなくて、純粋な喜びの涙だ。
 
 穂貴さんの動きはいつも優しくて、決して急がず、私の気持ちを確かめるようにゆっくりと進む。愛でいっぱいのその仕草が、私の心を満たしていく。体が重なり合うたびに、過去の記憶が鮮やかに蘇った。
 

「美宙ちゃん……これで、全部繋がったね。君の記憶が戻ってきて、好きになってくれた。君がいなくて、俺は空っぽだった。でも今、君がここにいてくれる。……愛してる、美宙ちゃん。永遠に」


 穂貴さんの声が耳元で優しく響く。その言葉の一つ一つが、私の心に深く刻まれる。穂貴さんの胸に顔を埋めると、そこから伝わる鼓動が私のものと重なるようで、まるで二人の心が本当に一つになったみたい。
 穂貴さんの匂い、穂貴さんの温もり、穂貴さんのすべてが、私を包み込んでくれる。

 この人が、私の過去と今と未来を、すべて藍色の糸で優しく、でも強く結んでくれたんだ。失われた記憶の欠片を、一つ一つ丁寧に拾い集めて、私に返してくれた。感謝しかない。



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