遅ればせラブアフェア
「ふ、嘘つき」
「……なっ」
眼前に留まる末広二重の瞳が、心を見透かすように細められる。
心の奥に住む卑しい自分に気付かれたくなくて咄嗟に目を逸らした刹那、上を向いた右耳にスッと彼の口が寄せられた。
「普段から正直に生きてる奴は損だな」
「……」
「……もっとして欲しいって、顔に書いてる」
「……っ」
低くて甘い囁きが……私の中の獣に呼びかける。
思わず耳を押さえ、なけなしの理性で睨み上げると、ゆるりと口角を上げた意地の悪い男がそこにいた。
いつも無表情で、何事にも興味がない人間だと思っていたのに。生まれて初めての状況に戸惑う私を楽しげに嘲笑うこいつは、……実はいじめっ子気質なのかもしれない。
「し、してほしいわけないでしょ、……馬鹿」
「へぇ、どうだか」
「……んっ、」
鎖骨にかかった髪を人差し指で払われたと認識した直後、今度は首筋に落とされたくちづけ。
唇へのキスとはまた違う、電流が走ったような感覚に反射で腰が浮いた。
「な……っ、海里、やだ」
「嫌かどうか、言葉じゃ判断できねぇな」
「待っ、て……あっ、ぅ」
「ふっ、到底嫌そうには見えないけど」
「……っ」
首筋を熱い舌先がなぞっていく。そのまま耳の縁をなぞり、クチュという水音に鼓膜を揺らされる。
半開きの唇からたらりと舌を落とす海里を視界の隅に捉えた途端、大きく脈を打つ心臓は……破廉恥すぎて自分のものとは思いたくなかった。