(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 同じ春を迎えるのに、「春一番」と「雨一番」と表現が違う。
 同じ大学進学だけど、「実務直結型」と「理想追求型」と進めるスタイルが違う。

 でもどちらも近いうちに起こることは、同じ未来である。
 季節が春になるということと、進路を決めて大学受験をするということも同じ未来。
 
 「…………」

 はじめ日高くんの進路の話をきいて羨ましいと思ったが、彼も同じ迷いを抱いていた。
 未来なんて望みどおりになることのほうが確率が低いのだと、彼も思っているようだ。

 どんと、不意に鈍い衝撃を受ける。「え、事故?」と思ったが、例の強風が信号待ちするバスの車体を強く吹き揺らしたのだった。

 (あ~、びっくりした~)
 (今日の風は、マジ、観測記録ものだよ)
 (春一番が強風だとしても、ここまでひどくないよ~)

 その春一番が吹けば、私たちは高校三年生になる。新学期に学校へいけば、新しいクラスメートとの一年がはじまる。
 なんとなく、こう思う。また、日高くんと同じクラスになれたらいいなと。
 これが恋愛感情かどうかはわからない。ただ彼は、私と同じ心的ストレスを抱えた同志かもしれない。
 
 「春一番と雨一番かぁ~」
 小さく声に出して、またパフェ懇談会を思い出す。
 明日どんな顔をして日高くんに会えばいいのか、私はバスの中でずっと考えたのだった。


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