(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
高校三年生・四月*落胆と感激の新学期
 三年生になった。ついに大学受験生である。
 先月に二年生だった私たちは、三月中はやはり二年生ということで最高学年の自覚もなければ、受験に対する認識もまだまだ甘かった。
 しかし、四月になれば正真正銘の三年生。あのどこかふわふわとした先月の受験生未満の空気はクラス担任によって吹き飛ばされた。

 「あ、むっちゃんと同じだ! 今年もよろしくね」
 新学期初日、入り口ドアには新クラスの席次表が貼られている三年生の教室を練り歩く。自分の名前を探し、見つかった教室へ入っていくのだ。
 その席次表をみて、隣にいるゆきりんがいう。
 むっちゃんとは私、白井(しらい)睦実(むつみ)のこと。入り口ドアの席次表をみれば、彼女とは昨年から引き続き同じクラスであった。
 「それにしても、きれいに分かちゃったよね~」
 きれいに分かれたというのは、昨年のクラスの仲良し女子四人グループのこと。私とゆかりんが六組、残りのふたりが七組である。
 とはいっても選択科目で、週に三回は移動した教室で顔を合わせることになる。春休み前の予想どおり、そこまで「クラス替えで別れて寂しい」ということはない。
 「三分の一の確率から考えると、いいほうじゃない」
 「そうね、ひとり、ぽつんじゃないし」
 なんていって慰める。女子の場合、高校といえどもそのあたりは少々は配慮されているのかもしれない。
 うちのクラス、他に誰がいるんだろう?
 じっくりと席次表をみたかったけど、ゆきりんに引っ張られてできなかった。

 ホームルームがはじまった。
 私の席は、後ろから二番目。あいうえお順で「白井」とは案外、流動的なのだ。今年は後ろだった。
 その後ろの席から、私は教室全体を見渡した。ある人物を探して。

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