(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
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春休み前の短縮授業日のことだった。その日はすごく風の強い日で、「春一番」を期待した。
でも風は冷たくて、単なる冬の強風だった。風の勢いは台風並みで、ゆきりんの電車の遅延を引き起こしかねないもの。さらにそれは、仲良し四人組で季節限定イチゴパフェを食べにいく予定をも吹き飛ばしたのだった。
すっかり強風に予定を台無しにされた午後だったのだが、風は私の時間までもかき乱す。
友人を見送ってひとり取り残された私に、同じクラスの日高くんが声をかけたのだった。
――白井さん、ひとり? どう、パフェ食べない?
気がつけば日高くんと向かい合って、イチゴパフェを食べていた。同じクラスだけど、単に同じクラスなだけの日高くんと季節限定パフェを食べたのだった。
カフェでは変に盛り上がり、完食後は一般的な話、受験生だから主に進路のことになるのだが、をして帰路についた。
帰りのバスの中で、明日どんな顔をしてあえばいいのだろう? ずっとそれが気になって仕方がなかった。
ドキドキしながら翌日、教室にいけば、今までどおりの単なるクラスメイトの日高くんがいた。昨日のことなどなかったかのように振る舞う日高くんがいたのだった。
(あれ?)
あまりの彼のそっけなさに、少しがっかりする。
(こっそり食べたパフェだから、騒ぎ立てるのは……困るわよね、お互い)
他人行儀なだけでなく、こちらに近づいてくる気配もない。教室の遠いところで、男子と話をしているばかりである。
(あ、いや……それは……それが、正解なわけで……)
帰りのバスの中で明日何を話そうかと浮かれていたのは、自分だけだと悟る。
正直にいう、日高くんとこっそり春の特別なパフェを食べて、秘密を共有して、嬉しかった。
でも、それは私だけの独りよがりの感情らしい。
――俺さぁ~、白井さんたちが噂していたパフェ、食べたいんだ。スゲーうまそうじゃん。でも男同士では、ちょっと、な。
パフェを食べたい動機のセリフを思い出せば、腑に落ちる日高くんの態度である。
彼はクラスの女子が噂するパフェを食べたかっただけなのだ。単にそれだけ。
三年生も同じクラスになればいいな、なんて思ったことに、一種の恥ずかしさを感じたのだった。