(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
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 パフェの翌日はそんな感じでなのだが、私は男子との交流が少ないがゆえに、あんなことでもずっとドキドキしていた。
 日高くんははパフェが目的で、私が目的ではないのだ。
 これを認めてしまえば次に進むことができるだろう。だれどパフェのあとの映画の話で日高くんが放ったセリフが鮮明だったがゆえに、簡単には流せないでいた。

 ――春一番ってさ、北海道にはないんだぜ。

 ホントかな? と思う。

 ――春一番はないけど、代わりに雨一番っていうのがあるんだ。

 これも、ホントかな? と思う。

 春休みの間、ずっとそれが気になっていた。
 新学期になったら「その情報、どの映画?」って訊こうかな、なんて思ったりもした。
 それを実行すべく、教室の後ろの席から私は日高くんの姿を探したのだった。

 だが、見つからない。
 「…………」
 同じ制服でも、気になる男子を見間違えることはない。彼が見つからない理由はただひとつ、同じクラスでないということ。

 (同じクラスになる確率が三分の一ということは……)
 (同じクラスでない確率が三分の二ということで……)
 (同じクラスになれない可能性のほうが高い)

 新学期早々、急速に目にみえるものが色褪せた瞬間だった。



 「では、各委員を決めるぞー。まず、総代からだな。やりたい人」
 新学期の恒例行事である委員決めがはじまった。難航するのは、いわゆる学級委員長だろう。そういえば、去年はどうやって決まったんだった?
 当たったらやだな~、なんて思っていたら、予想は外れた。なんと、昨年まで生徒会長を務めていた人物がいたのだ。誰かがその元生徒会長を指名して、本人もあっさり了承する。
 クラス委員長が決まってしまえば、あとは早かった。
 副委員長、整備委員、図書委員、学園祭実行委員会……という具合に名前が埋まっていく。前期と後期で入れ替わるから、受験を考えると前期に済ませてしまうほうがいいかな~なんて思う。そこに、聞きなれない委員名が耳に飛び込んだ。

 「卒アル委員、やりたい人、いない?」

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