(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 「誰かいないか? 機材の心配はしなくていいぞ、学校のものが使えるから」
 生徒個人のスマホでの撮影は禁止されていた。自宅に一眼レフカメラなどがある人は、それを使ってもいいとのこと。適当なカメラがない人は、学校のを拝借できる。
 「それなら、私、やってみます!」
 気になっていたのは、カメラのこと。小学校の行事用に親が使っていた古いデジタルカメラしかなかったのだが、貸してくれるというのならありがたい。
 「お、白井さん。ありがとう。じゃあ、卒アル委員は白井さんということで……」
 衝動的に、私は手を挙げてしまっていたのだった。


 「まさか、むっちゃんが卒アルに立候補するなんて、思わなかったよ~」
 昼休みになって、中庭で弁当を広げる。わざわざ外に出たのは、春の陽ざしに誘われたのものあるが、七組のメンバーと合流できるから。
 新学期初日から弁当なのは、委員決めのあと春のオリエンテーション、いわゆるクラス遠足なのだが、を決めるからだ。できる限り授業のない日に、ホームルーム的なものが詰め込まれていた。
 「でも、いいんじゃない。むっちゃん、細かい作業に向いてるし」
 「卒アル委員権限で、うちらの写真、たくさん撮ってもらおう」
 残りのメンバーは図書委員と副委員長とただの生徒であった。全員が何かの委員につくわけではないので、ただの生徒がいる。
 私はそう積極的ではないので、前期はただの生徒で、後期に図書委員というのがお決まりのパターンであった。だから前期に、しかも特殊な委員に立候補したのは、意外であったらしい。
 「うまくできれば、ね。なんとなく、慣れたころに委員会活動終了っぽい気がするんだけれど、頑張るよ」
 「そうそう。お互い、最後の委員会活動、頑張ろうね」

 午後からのホームルームが終わると、早速、私は三年四組へ向かう。卒アル委員会の顔合わせである。
 ドキドキしながら四組を覗けば、既に何人か集まっていた。その集団は女子のほうが少し多い。卒アル委員会が圧倒的に男子ばかりだったらどうしようかと思ったが、杞憂に終わった。
 四組の入り口付近でほっとしてしていれば、こんな声がかかる。
 「隆文(たかふみ)~、おせーよ」
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