(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん

 「?」
 (たかふみ? 誰だろう?)
 (私のことじゃないのは、間違いない)
 「あ、わりぃ。八組、ここから遠いから、勘弁な」
 すぐ後ろで、隆文なる人物が謝る。それは、とても馴染みのある声だ。
 (え?)
 (まさか?)
 思わず振り返れば、日高くんがいた。六組で見つけることのできなかった、日高くんがいたのだった。


 †††


 委員会初日ということで、自己紹介をし分担を決める。
 私は会計係になる。女子といってもリケジョは数字に強いし、男子よりも女子のほうが管理がマメそうだから、という理由で。
 日高くんは、特になし。彼はいう、僕、八組の副委員長と兼任だから軽くしてと。
 どういうことかときけば、八組では卒アル委員の立候補者がいなくて、先生に指名されたとのこと。進路先が難関校でない日高くんなら受験勉強に余裕があるだろうということなんだけど、ひとりで副委員長と卒業アルバム委員を行うなんて。
 (八組って、医療系進学のクラスだったはず)
 学校でも秀才が集められるハイレベルなクラスに、医学部志望でない日高くんがいる。これって、先生が彼にクラスの雑用係を期待してのことと勘ぐってしまう。
 (それを嫌がらない日高くんも、すごいかもしれない)
 机を寄せただけの即席の会議テーブルで、入室時の流れで日高くんの隣に私は座っていた。彼の横でそんな会話をきいて、少々ビビる。
 (でも……)
 分担決めのこととは別にして、こうも思っていた。
 (アレだよね、これって、ラッキーな巡り合わせかも)
 ここはひどく個人的な感想だ。
 (だって、同じクラスになれなかったから、もう話す機会がないと思っていたんだもん)
 そう、私は委員会とは全然無関係なことに、ひしと喜びを噛みしめていたのだった。

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