(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 いつかどこかできいたセリフが、後ろからかかる。
 この声に、この軽い調子、不意打ちのお誘いをするこのセリフ、こんなセリフをいうのは…………
 途端に記憶が蘇る。この声は、間違いない。確信をもって振り返れば、そこには日高くんがいた。

 「え、どうして? それに、なんでパフェなの?」
 「さっきの電車で戻ってきたところ。遅延事故で到着が遅れたんだ」
 日高くんが指さす先には、電光掲示板に遅延してご迷惑をおかけしていますの文字が流れている。打ち上げ会幹事のいう「間に合えばくる」とは、本当のことだった。
 「…………」
 引っ越しさぎょうのあとでは間に合っても疲れていて、不参加になるかもしれない。なかなか現れない日高くんのことを、そう思っていた。でもまさか、電車遅延とは。ごくごく晴れた日の平日であれば、そんなこと予想もしていなかった。
 (この人って、どうしてこう、驚くことばかりなんだろう)
 卒アル委員活動以来の密なコンタクトに感動していれば、その邂逅の仕方が一年前と全く同じセリフではじまって感激もする。
 (こういうのって、それこそ、映画みたいじゃない?)
 (もしかして、狙ってやっている?)
 映画が好きでその方面に進みたいといっていた日高くんであれば、そう推測してしまう。
 いろいろな思いが入り混じって、次の返事ができない私に、
 「去年さぁ、一緒に食べたパフェ、うまかったからまた今年もやっていないかぁ~って思って誘ったんだけど、ダメ?」
 「え?」
 なんと、去年のパフェを、しっかり彼は覚えていた。
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