(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 「た、確かに、あれは美味しかった」
 「だろ~。もう一度、食べたいと思わない?」
 「え、うん、まぁ、そうね……」
 あまりにも一年前と同じシチュエーションに、私はドキドキする。これでは絶対に、映画女優にはなれない。
 「じゃあ、決まり! いくよ」
 と、日高くんは去年と同じ方向へ、私を連れていったのだった。


 一年前と同じカフェに入り、一年前と同じ席につく。
 今の時刻は、お茶よりも食事に相応しい時間である。客の入りは、まばら。これも去年と同じだ。
 違うのは、季節限定パフェの仕様とお互いが制服でなく私服であること。今年の季節限定パフェは、イチゴはイチゴでもイチゴモンブランであった。
 「イチゴそのものじゃないけど、こういうのもいいな~」
 ご機嫌で日高くんはピンクの糸掛けクリームを口に運ぶ。その頬張り方は、去年と全く同じ。
 私もひと口食べれば、柔らかな食感と甘いイチゴ風味にノックアウトされる。
 若者は常に腹を空かしている。一年前と変わらずに、あっという間に平らげてしまった。

 お口直しのアイスティーを飲みながら、
 「そういえば白井さんの大学って、俺の大学と近いんだよね~」
 と、私の進学先のことに触れてきた。
 (あれ? なんで、知ってるの?)
 日高くんの進学先は、あっつん経由で知っている。けどそういえば、ストーカー女子を表明することになるので、
 「日高くんは、どこなの?」
 と(うそぶ)いた。
 「あ、教えてなかった? 俺、R大学の心理。ここ映像関係の講座が充実していて、就職先も映画関係が集まっていたから」
 「!」
 なんと、日高くんは目的を達成していた。
 学部名に惑わされて、私は日高くんは進路変更してしまったのだと勝手に思い込んでいた。
 でも真実は、何ひとつブレていない日高くんがいるのみである。一度に今まで抱えていた心の薄暗いものが消え去った瞬間だった。

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